人類は宇宙人によって創られた存在である

今現在,人工知能・生命,二足歩行ロボティクスなど様々な研究が行われている.これらが研究されている目的は様々であるが,ここで,これらの最終的な目標は,我々人類と同等かあるいはそれ以上の知能・知性・生命力を備えた,もうひとつの,人類とは別の知的生命体を創りだすことであると仮定する.いま,人類が創り出した,人類と同等な能力を有する知的生命体の名をパーフェクトアンドロイドと名付けたとき,我々人類はこのパーフェクトアンドロイドを創りだすことは可能なのであろうか?ここしばらく,この問題について考えていたので,ここいらで少しまとめてみようと思う.

まず初めに,人類はパーフェクトアンドロイドの創造は可能であると仮定する.すると,パーフェクトアンドロイドの条件により,パーフェクトアンドロイドは,新たな別の種であるパーフェクトアンドロイド2を創ることが可能である.なぜなら,パーフェクトアンドロイドは人類と同等な能力を持っており,新たな種を創造する能力を有しているはずだからである.もしも仮に,再帰的に種の創造が可能であるとするならば,我々人類は宇宙人の創造物である可能性が非常に高い.我々は,無限に連鎖して創造されていく種の通過点に過ぎないのだ.そうでないならば,我々は全ての種の創造主たる神である.

これらの論証が導き出す結論は,いささか理解に苦しむものである.我々人類が宇宙人から創造されたというのは全くもって荒唐無稽であるし,我々が種の創造主である神であるというのも到底納得できない結論である.背理法によると,結論に矛盾が生じる場合は仮定が間違っているのである.となると,仮定となっている「人類はパーフェクトアンドロイドの創造が可能である」か「再帰的に種の創造が可能である」という条件が偽である可能性が高い.

ではここで,「再帰的に種の創造が可能である」という条件の真偽を考えてみよう.いま,もう一度我々の最終的な目標を思い出してみると,それは,我々と同等な能力を有した知的生命体であるパーフェクトアンドロイドを創り出すことであった.しかしながら,創り出した生命体が,新たに別の種の生命体を創り出せないようでは,我々と同等であるとは言えない.従って,再帰的な種の創造が可能で無いのならば,人類がパーフェクトアンドロイドを創造することは非常に困難であると考えざるを得ない.

以上の推論から導かれる結論は,以下のいずれかが真であると言うことである.

  1. 人類は,人類と同等の能力を有する知的生命体を創りだすことはできないか,もしくは非常に困難である
  2. 人類は,宇宙人によって創られた存在である
  3. 人類は,種の創造主たる神である

個人的な感覚では,1 > 2 > 3の順に可能性が高いと考えられる.特に,2 > 3は確実だと思われる.なぜなら,無限に続く連鎖のうち,たまたま一番最初である確率は相当に低いと考えられるからである.しかしながら,ここで,新たな種を創造可能である確率はベルヌーイ試行によって決まるとすると,もう少し違う結果になるかもしれない.つまり,人類がパーフェクトアンドロイドを創り出せる確率はpで,パーフェクトアンドロイドがパーフェクトアンドロイド2を創り出せる確率も同じくpで,と考えていくと何世代か後のパーフェクトアンドロイドNが創り出される確率は限りなく0に近くなっているはずである.だが,それにしても,人類がパーフェクトアンドロイドを創り出せる確率はそれほど高くなさそうである.

これと似たような話でシミュレーション・アーギュメントというのがあるが,こちらの理論によると,我々の世界は実はシミュレーションによって創られた世界で有る可能性が高いそうだ.だが,シミュレーション・アーギュメントでは,再帰的に無限のシミュレーションが可能であると仮定している.そこで,こちらにもベルヌーイ試行の考えを取り入れてみると,再帰の深さは有限となり,我々は現実世界の存在であると云えるようになるのではないだろうか.しかし,こうすると,現実世界と全く同じ環境をシミュレータで構築することは困難であると結論せざるを得ないが,これは我々の経験則と何ら乖離してない.

シミュレーション・アーギュメントでは,我々の世界はシミュレーションによって創られた世界であるかどうかなんて観測不可能であり反証も難しかった.しかし,我々人類の地球での歩みについては,完璧とは言わないまでも観測可能である.人類が宇宙人から創り出されたという確証が得られれば,パーフェクトアンドロイドの創造に大きな希望が持てるかもしれない.